最近、二つの「変態」に関する映画を観たので作品の紹介をしたいのですが、
最初に、
変態に関する映画と変態映画は全く別物なのでお断りしておきますね。
オタマジャクシがカエル、みたいな生育過程で形態を変えていく方の変態の話です。
ちゅうが観た二本の映画は
①ハッチング −孵化− というフィンランド映画
②ブルー·マインド というスイス映画
になります。
ちなみに、
変態映画の方といえば、
鈴木亮平のデビュー作「HK 変態仮面」とか、
空耳アワーの安齋さんが監督の「変態だ」、
辺りが思いつきますが、今回はそっちの話は無し。(変態仮面は好きなんですけどね)
「ハッチング」は、
産まれた雛鳥(巨大)が、飼い主である人間そっくりに育っていく話。
「ブルー·マインド」は、
思春期の少女が初潮を迎えた頃から、身体にヒレや水掻き、鱗なんかが現れ、人魚になっていく話。
それぞれフィンランド、スイスという欧州国の制作映画なんですが
ヨーロッパ的な内省的作品になっています。
フィンランド映画もスイス映画もあまり触れる機会が少ないので、
その辺りも楽しみに視聴することが出来ましたね。
どちらもホラー映画という括りになる作品ですが、
目を覆うようなシーンがあるわけでもなく比較的多くのひとに見て頂ける仕上がりになっています。
今回は、ハッチング −孵化−の方のご紹介をしたいと思いますが、
興味を持って頂ける方は、
スイス映画、ブルー·マインド の方もオススメなので
是非ご覧になって頂きたいです。
ハッチング −孵化−(原題 Pahanhautoja、英題 Hatching)は、
2022年公開のフィンランドのホラー映画。
ホラー映画の恐怖の対象が、
美少女が卵から育てた不気味な異形鳥かと思っていたら
幸せそうな家族を演じるYouTube家族の本当の姿が、
ある意味ホラーという不思議な映画です。
そして、その他の登場人物も一癖も二癖もある人物ばかりで、
何か心に引っかかるというか、スッキリ出来ない部分があるのですが、
ストーリーが上手に構成されており、最後まで目を離せずに完走出来る秀作だと思います。
心に引っかかる、スッキリ出来ない部分があるというのは、制作側の狙った効果でしょうから、
コレは最後まで完走して観るべき映画だと思います。
ホラー映画なので、物理的にも精神的にも汚い部分が目立つのですが、
衝撃の結末と、
その結末の後の、登場人物の未来を無性に観てみたくなる
「ハッチング −孵化−」を一緒に観ていきましょう。
🆘ネタバレ注意🆘
白を基調としたハイクラスなインテリアに囲まれ、
美しいブロンド少女の身体の柔らかさを活かしたゆったりとしたストレッチが映し出されます。
と、映像右から手が伸び、
ブロンド美少女を驚かせじゃれ合う、こちらもブロンド美女。(ブリトニー·スピアーズ似)
そっくりな顔立ちを持つ母と娘は、
カメラ目線で笑顔を見せつけます。
完全にYouTube向けの構図。
続いて人の良さそうな眼鏡のお父さんと、
お父さんにそっくりなこちらも眼鏡の少年が写し出されます。
顔がそっくりな父と少年の男性組は、同じような服装でカメラ目線でニコニコ、
顔がそっくりな母と娘も、ブロンドヘアでカメラ目線でニコニコ。
父と母を中心に左右に姉と弟が脇を固めるようにソファーに座る4人。
フィンランドの美しくも微笑ましい家族を4人が演じる理由は、
母が力を入れているYouTubeにあるようです。
そのYouTubeの撮影をしている最中、
一羽の黒い鳥(カラス⁉)が、窓から部屋に紛れ込みます。
混乱している“その鳥”は、
YouTube用に飾られているガラスインテリアをことごとく床に落としていきます。
すばしっこい鳥は、誰にも止められず、
最後の大物、ガラス製の立派なシャンデリアも、
結局その鳥に落とされてしまいます。
娘ティンヤは、素手で捕まえるのは難しかったので、
毛布を被せることで、何とか鳥の身柄を確保します。
ティンヤの母親は、鳥を捕まえた安堵からでしょうか、
外に鳥を逃がそうとするティンヤから、満面の笑みで鳥を包んだ毛布を取り上げ、
毛布の中の鳥の身体を“ポキっと”折ってしまいます😱
母親は笑顔を絶すことなくティンヤに、
庭にあるダストボックスに捨てるよう命じます。
ティンヤの母親の性格が見える一場面。
満杯で蓋がキチンと閉まりきらないダストボックスの中に鳥の死体を入れ(置き?)、
悲しい目を見せるティンヤ。
最近引っ越してきたばかりの隣の家では、同じ年頃の女の子が飼い犬とじゃれあって遊ぶ声が聞こえてきます。
お互いの存在に気づいた二人は自己紹介をします。
彼女はレータ。
歳も近そうで、仲良くなれそうな出会いでありました。
(彼女の飼い犬に撫でることを拒絶され、噛みつかれそうになったけれども…)
その日の深夜(白夜)、
野鳥の啼き声でティンヤは目が覚めます。
苦しさを主張するようなハイテンションな啼き声に導かれ、
森の中へ入っていくティンヤは、直ぐに音の出どころを発見します。
多分、ティンヤの母親に殺されたと思っていた“あの鳥”のようですが、
まだ生きていたのでしょう。
ティンヤは、優しく介護しようとするのですが、啼き声で拒む黒い鳥。
あまりの強い拒絶にあったティンヤは、衝動的に、
鳥が啼くのを止めるまで、何度も何度も、
その鳥に石を打ちつけてしまいました。
啼き声が止んだ頃には、その鳥の頭部は原形を留めないほどに様変わり…
近くには、一つの小さな卵が残されていました。
彼女はその卵を大切に持ち帰ります。
翌日、体操教室に通うティンヤ。
もうすぐ行われる大会に出場するために、練習に力が入っていました。
ただ、そこそこの実力者と思われましたが、フィニッシュで失敗と、
どうやら詰めが甘い様子。
落ちこんでいるティンヤに、一緒に遊ぼうと声をかけてくれる体操仲間もいるのですが、
走って(トレーニングとして)帰らなければならない、と断りを入れるティンヤ。
母親から受ける英才教育の一貫で、体操競技をしているようなのですが、
彼女の控え目な性格のために、体操だけではなく様々なことに、母親の意向というものが見え隠れしています。
現在、母親が特に力を入れているのが、
多くのフォロワーを持つYouTube活動で、
その場で大々的に発表している自身にそっくり写しな娘の体操競技は、
そのチャンネルのメインな見せ場となっているようです。
母親の英才教育に従い、ランニングで帰るティンヤ。
真面目な彼女はサボらず走り続け、すぐに家に帰ってきます。
玄関に入ると、
前日の鳥騒ぎの後片づけ、シャンデリアの交換がちょうど終わったところのようで、
脚立から降りた業者さんに母親が近付いていました。
近付いて、近付きすぎて、あれ?
抱き合いキスを交わす母親と業者の男。
業者さんに至ってはお尻に手を廻し、
お互い手慣れた感じの雰囲気で、抱き合うシーンに遭遇してしまったティンヤ。
ティンヤの存在に気づいた二人は、すぐに抱擁をとき、
ティンヤに笑顔を向ける母親。
何もなかったかのように、二階の自室に逃げ込むしかなかったティンヤでした。
ティンヤが部屋に入り、落ち着く間もなく母親がやってきます。
娘の許可を得て娘の隣に座る母親。
不倫の言い訳かと思いきやプレゼント🎁をティンヤに手渡しします。
中身は体操競技の大会用のコスチューム。
ティンヤは、不倫の目撃などなかったかのように笑顔を見せましたが、
母親の方から不倫の弁明がありました。
“時に、オトナには特別な人が必要なの” と母親。
父親を心配するティンヤに、
“パパはパパよ ああいう人だからね”
と回答にならない答えと笑顔を見せる母親は、
このことは多言しないように、と娘に釘を刺す母親。
更に2日間家を空けると(不倫してきまーす)ダメ押し😰
思ったことを言えないように育てられたティンヤに出来ることは、
微笑みを返すことだけ。
この件から、彼女は部屋に入り浸るようになり、
拾ってきた卵を愛でるばかりになっていきます。
2日間の不倫(家族にはYouTubeセミナー参加)から母親が戻ってきた頃には、
驚くことに、卵が明らかに大きく成長していました。
大きなクマのぬいぐるみのお腹に切込みを入れ、
その中に卵を収めるティンヤ。
ティンヤにとってその 卵 は、かけがえのない存在になっていきます。
娘の大会出場のため教室に様子を見せる母親。
大会出場の最後の一枠を目指しているティンヤに、
思いがけないライバルが現れます。
それは、
隣に越してきたばかりのレータでした。
二人は純粋に喜びあうのですが、
ティンヤの母親は、ライバル出現に火がつきます。
教室が終わった後も、ティンヤの指導を初める母親。
豆だらけのティンヤに暗くなるまで鉄棒の練習をさせます。
ティンヤの大会の様子を生配信する予定でいる母親は、
本人以上に大会出場という結果を求めていました。
その日の夜、照明を当てながら痛みが残る手の平で卵を撫でていると、
卵の殻の中の子どもが動き回ります。
親鳥のようにはさせないと決意するティンヤでした。
YouTube動画のチェックをする母親とそれを見守る娘ティンヤ。
母親は突然、自分は恋をしている、と娘ティンヤに告白します😰
先日の業者さん、テロという男と恋に落ちてしまった、と言います。
作ったような笑顔と、不安げな表情を織り交ぜるティンヤに、
追い打ちをかけるように、週末に彼に会いに行く、と母親。
部屋に戻り泣きながら卵に頬寄せるティンヤ。
(卵は信じられないほど大きくなっています😲)
母親の不倫のことで流しているたくさんの涙を、
卵はどんどん吸収していきます。
ティンヤの痛みや苦しみを養分とするように、大きく大きく育って(?)いく卵。
⁉ 卵の異変を感じたティンヤは、
その大きな卵に亀裂が入ったことに気づきます。
亀裂からはティンヤと同じくらいの大きさの鳥の手(足?爪?)が飛び出し、
得体の知れない存在、大きさに初めて恐怖を覚えます。
ティンヤは恐ろしさから、クローゼットに身を隠し、
扉の隙間から孵化を見守ることにします。
姿形ははっきりとわかりませんが、明らかなことは、
異形が生まれたということ。
それもティンヤと同じくらいの大きさということ。
その存在の行方を見失い、隙間から探していると、
存在もコチラを覗いていました😱
異形のギョロっとした大きな目を見てしまい悲鳴をあげるティンヤ。
大声に驚いたのか、その存在は窓を突き破り外の世界へ逃げていきます。
ティンヤは、孵化した際の卵の殻やら粘液まみれのシーツを毛布で覆い隠し
家族の侵入に備えます。
驚く父親が部屋に入ってきたので、
前と同じように、鳥が入ってきて窓を割って逃げていった、と報告。
まんざら嘘とも言えない嘘でその場を乗り越えます。
翌日、外に散らばったガラスの破片を掃除します。
鳥の死体が見えないことから、
逃げた鳥は怪我をしているんじゃないじゃないかなぁ、と父親。
その日の夜、窓の方に気配を感じ、段ボールで補修した窓をそっと覗こうとすると、
その異形は入って来ました。
見た目は鳥の雛ですが、骨と皮の骨っぽい身体をしています。
初めて面会する一人と一羽(一匹?)は、
真逆の表情を見せます。
ティンヤには恐れがハッキリと読み取れます。
鳥の雛の方は、表情は読めませんが明らかに仲間と(親)認識している様子。
ティンヤは 雛 の腕にガラスの破片が刺さっている(貫通)いるのを見つけとって上げます。
これ以降は仲良くなる一方で、
身体中粘液まみれでニオイの気になる 雛 を風呂場で綺麗にして上げます。
途中トイレに起きてきた弟を、
外でしろ、と追い返す鬼畜姉ティンヤ😅(風呂場を通って、トイレにいく作りになっているのでしょうか)
寝床はベッドの真下に作って上げて、雛 との共同生活が始まることになりました。
ベッドで眠るティンヤは、隣家のレータの犬の悪い夢で目覚ますと、
上には、ティンヤにまたがっている 雛がいます。
雛 の口からは例のべとべとした粘液が滴りティンヤの顔に落ちてきます。
彼女は横に顔を逸らすと、
目の前には頭部のないブルドッグの血まみれ死体が置かれており、
気持ち悪さから、胃の中のものを吐き出してしまいます。
その吐出物をむさぼり食う 雛。
コレは、
彼女の敵(以前噛みつこうとした犬)を殺ってきたご褒美の図、
なのでしょうか。
翌日見つからないように庭に犬の死体を埋めるのですが、
家の中からお面を被ったティンヤの弟がソレを見ていました…
ペット屋さんで 雛 の餌を探していると、レータとばったり会ってしまいます。
レータの飼い犬の件で会いづらさがあり、体操の練習も休んでいたのですが、
会って見て不安が消えたようでした。
ただ行方不明になった飼い犬探しを手伝うことになってしまいます。
家に帰ると元気のないティンヤのために欲しがっていたおもちゃを買ってくれた両親。
ティンヤの弟は姉だけズルいとばかりに、姉が埋めていたレータの飼い犬の死体を掘り起こし、
家族の眼前に晒します。
レータから渡された探し犬のチラシと共に、
お姉ちゃんが殺した、と主張するティンヤ弟。
以前からギクシャクしていた姉弟関係が更におかしくなっていきます。
又、以前母親に用意して貰っていた体操の大会用コスチュームが、雛 に破られてしまっていたのですが、
ソレを母親に見つかったりと、
雛 の扱いに困り果ててしまいます。
一方で、
その頃から 雛 に、母やティンヤのようなブロンドの髪が生えてきていることに気づきます。
少しずつ人間に近づいていく感覚があるのでしょうか、
雛 に洋服を与え、髪を伸ばさせます。
まるでお人形さんごっこでもしているかのように…
また、眠る前に 雛 に歌ってあげた水鳥(アッリ)の子守歌を覚えたのでしょうか、
“アッリ”という言葉を音にして口にしたことから、
雛 のことをアッリ と呼ぶことにしました。
体操の大会が近づいてきますが、最後の1枠を争うレータとの差は縮まらず、焦り初めるティンヤ母。
体操教室の帰る頃には、あたりが暗くなっていたので、
ティンヤ母はレータを車に乗せて帰ろうと思っていたのですが、
レータは遠慮して一人で歩いて帰ることにします。
人気のない道路を歩いていると何者かに付けられている感のあったレータは、
その後、何者かに襲われてしまいます。
ちょうどその頃、母親が運転する車に乗っていたティンヤは、
イヤな予感を感じ、道路を戻るよう(レータのところへ)母親に頼んでいたところで、
何者かにレータが襲われたと同時にティンヤは大声を張り上げてしまいます。
ティンヤは、レータが襲われたであろうことを、犯人はアッリであろうことを、
予感したのでしょう。
アッリの悪事は、ティンヤの心(夢の中も含め)とシンクロするのでしょうから。
車の中で大声を出し、母親に心配されたティンヤは、
気分転換が必要と母になだめられ、
母が週末に会いに行くといっていた、不倫相手のテロのところへ、
ティンヤも一緒に行くことになりました😮💨
(どうして不倫相手のところに娘を連れて行くことが、娘のためになるのでしょうか?)
家に着くと部屋を確認しますが、アッリはいませんでした。
クローゼットに閉じ込めていたはずでしたが、もぬけの殻。
ここで、レータはアッリに襲われたということを確信したことでしょう。
そして、そのクローゼットの中には、何故かアッリのクチバシ部分が欠け落ちていました。
アッリはティンヤのようなブロンドの髪が生えてきたりと、
ティンヤのような人間にどんどん近づいていたように、
アッリは、変態を繰り返して人間の姿形を手に入れていくのでしょうか、
クチバシの欠落は人間の顔を手に入れた証左なのでしょうか、
そもそもアッリはどんな生物なのでしょうか?
そしてアッリに襲われたレータは現在どうなっているのでしょうか?
週末、一緒に訪問することになってしまった母親の不倫相手テロの家では、どんな事件が起こるのでしょうか?
更に、ティンヤの家族、上手くいっていない弟、妻を寝取られそうな父親はどうなってしまうのか、
ティンヤと異形アッリ、ティンヤの母親にはどんな結末が待っているのか?
続きは是非、映画を観て確認していただきたいです。
この映画は、
ホラー映画の怖さの対象となるアッリの恐怖度というのは低いのですが、
アッリの得体の知れない生物感や、
主人公ティンヤの母親の突飛な思考回路、
と、なかなか楽しめた作品でありました。
純粋なホラーというよりも「世にも奇妙な物語」的なホラーといった感じ。
普通に考えると、アッリの存在は産まれたばかりの子どものはずですが、
映画ミーガンのような主人公のために働く家来といった感じであります。
あまり守って貰う対象には見えません。
ティンヤ母がアッリの母親であるならば、自分のために喜んで働くアッリを可愛がるだろうと想像してみちゃいます。
又、そう考えてみると、
母親のために強くありたいというティンヤの願いが、
アッリを産み出したといえるのかも、と思ったり…
ティンヤが拾ってきた鳥の卵がどんどん大きくなるという、その養分が何だったのか考えてみると、
結構考えられたお話だなぁと思いました。
この映画を見た時、デヴィッド·リンチのブルー·ベルベットのオープニングシーンを思い出しました。
綺麗に整備された芝生をかき分け、よーくじっくり見てみると、
黒光りする蠢めく虫がうじゃうじゃ出てくるブルー·ベルベットの冒頭シーンのことです。
綺麗に整備された美しい街、住人が幸せに暮らす住みやすい街であったとしても、
裏側には見せられないような汚い部分がある、という意味だと思うのですが、
ハッチングというこの映画でも、
ティンヤ母の華やかな美貌の裏に潜む様々な欲望が透けて見えてきますからね。(この人は欲望まみれ)
ただね、
夫や不倫相手のテロも、彼女の裏(欲望)がわかっていても、見ないふりをします。
理由は、彼女の美貌が欲しいから、見ないふりをすると思うのですが、
そんな、見ないふりをするという男たちの行為も、男たちの隠したい欲望だということに、
今さらながら、気付いてしまう ahoな ちゅうでした。
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