10月に入った頃、古い知人から電話があり、あれこれ長電話になったことがありました。
その知人が住んでいる土地で体を壊し、現在親元に帰ってきた身として、10年ぶりの声を聞けた嬉しさとともに懐かしさが…
その知人も気分が良かったようでグラスの氷の音やら酒を継ぐ音まで聞こえ、気分良さげに話をしていたので、
それがコチラに伝わって来て、とても楽しく時間を共有出来ました。
コッチはもちろん酒は入ってないけどね。
昔話とたいして大切とも思えない話だったけれども、10歳若返ったようなとても良い気分転換になりました
彼とは欧州サッカーと音楽の話が多かったのですが、映画の話にもなり韓国、中国のドラマに最近はまったとの話がありました。
ちゅう の映画好きを知っていた彼から、オススメの韓流、中華の映画ドラマを聞かれたのですが、
時代劇以外で、という条件もいわれたので少し悩みました。
韓国、中国のドラマは見るといえば、圧倒的に時代劇が多かったので、その旨を伝え何作か教えたのですが、
その中で ひょう門 という中国ドラマに興味を持ってくれました。
彼にも伝えたのですが、清朝末期から中華民国、中華人民共和国という近代ではあるけど、現代劇ではないこの作品、
ちゅうの一番好きな中華ドラマという言葉で選んでくれたようでした。
ちゅう も説明しているうちに自分でももう一度見たくなってしまい、結局全38話を約一週間で視聴しました。
本日はその大好きな中華ドラマを紹介したいと思います。
ひょう門 Great Protector は、2015年中国のテレビドラマ作品(全38話)。
主人公、劉安順 役のウォレス·フォは台湾出身の俳優で、若くして中国に活躍の場を移し現在に至る大スターです。
ルックスもそうですが彼が見せる武芸の切れがとにかく素晴らしい。
彼の代表作の一つに 如懿伝(2017年) という歴史ドラマがあるのですが、それが彼を知り、ひょう門を見るきっかけになった作品でした。
この如懿伝もとても素晴らしい作品で、美しく、悲しく、儚いドラマでした。
(ドロドロ展開が辛い作品でもありましたが…)
コチラもオススメです。
さて、ひょう門(鏢門)は主人公、劉安順(りゅう·あんじゅん)が、清王朝末から中華民国、中華人民共和国と変革期、混乱期に鏢師として活躍する物語です。
鏢師とは荷物や旅客の運送、保険、護衛などを請け負う人のことです。
そして荷や人を守るために武芸が必要な仕事だったことから、武芸者が集まり修行する門の側面もありました。
保険をかけたり、荷を守らせるのは、今の時代でも似たようなことはしています。
清王朝といえば一時世界一の版図を誇ったことのある世界でも有数の強国。
そんな平和な清で武芸者が出来る仕事といえば、このような鏢師や、それを襲う盗賊団くらいだったのかも知れません。
しかしアヘン戦争の敗北後は、更なる薬物汚染、王朝の弱体化で、加速度的に治安の悪化を招いたのではないかと思います。
危険と背中合わせの業界ですが、そんな中に劉安順(以下安順·あんじゅん)が所属する太谷鏢局という中国全土で名の知れた鏢局がありました。
その太谷鏢局のトップである戴海臣(たい·かいしん)から、将来を嘱望された安順は、戴海臣 のひとり娘との婚約を認められていましたが、
安順は、融通を利かせることの出来ないバ◯正直さから、ある出来事で濡れ衣を着せられ太谷鏢局から追放されてしまいます。
といっても、組織のトップ戴海臣は事件の本質を正確に把握しており、北京で鏢局として独立する安順をサポートし続けていくことになります。(娘との婚約もそのまま許しています)
安順は武芸の師匠でもある(コチラが本当の絆)戴海臣も認める武芸の実力者で、その上情に厚く、義理堅い。非のうちどころのない好漢なのですが、
とにかく融通の効かないク◯真面目、バ◯正直な性格が、自分の生き方をどんどん狭くしていきます。(だが、それがいい)
北京でたったひとり鏢局を立ち上げた安順のもとには、
彼の人間性に惚れこむもの、利用しようと企むもの、妬むものなどが現れますが、
ただただ正義で解決していく強さ(力の強さ、言葉の強さ、精神の強さ)で仲間も増え評価を高めていきます。
ただ、生きづらいだろうな、自分には絶対無理、という生き方。
茶目っ気を引いて生真面目にした前田慶次という感じ。
そして彼の正義感に一部の人間はヘイトを持ち始め、妬みから憎悪を重ね募らせるばかり。
武芸では敵わないので、安順の周りの弱い人間も目の敵にされていきます。
更に清から中華民国という時代の変化にも、翻弄されすぎというほどの、逆風にあてられます。
物流や交通の変化(馬から車や列車へ)、
武器兵器の変化(刀から銃、大砲)、
古くさい考え、古くさい人間は自然と淘汰されていく時代。
安順の鏢局にも古くさい考えの人間がいたり、詐欺師がいたり、安順のやり方に不満がある人間がいたりとバラバラの鏢局でしたが、
このドラマの最後の頃には、
みんな安順と同じ方向を向き、
安順のように正直であろうとする仲間に変化、
涙する場面が増えていきました。
全38話とアジアのテレビドラマとしては決して長くない話ですが、
映画20本くらいの大ボリュームです。
ですからエピソードはたくさんあるのですが、
路瑶てい(ろ·ようてい)という女性のことはお話しなければならないでしょう。
(路瑶てい の ていは 女へんに亭)
安順が北京で鏢局を開業した時の最初の仕事が、路瑶てい の護衛でした。
誰も請けたくない依頼だったので、安順に回ってきたのが事実。
いわゆる面倒ごと。
路瑶てい は暗がり峠にいる土匪の首領のひとり娘で、天真爛漫、度胸満点、頭脳明晰な強い女性なのですが、
ボスのひとり娘というポジションからなのか、横暴、ワガママが過ぎて、正反対の人間である安順は彼女の扱いに手をやきます。
土匪の砦でワガママ放題暮らしてきた 路瑶てい は、大都会北京での旅行生活が楽しく、思い通りに遊びまくりますが、
北京の役人に目を付けられてしまいます。(土匪は反清の勢力)
安順は 路瑶てい の自由奔放さに手を焼きながらも、影ながら護衛をこなしますが、
役人の前で壁となり護衛をしている隙に 路瑶てい はある人物に誘拐されてしまいます。
北京の役人のお偉方も誘拐犯も、安順の物語の中での大敵となっていくのですが、
この二つの敵に立ち向かいながらも 路瑶てい を奪回、北京旅行の護衛を全うします。
出会った頃の路瑶ていは、真面目で堅物過ぎる安順など全く視界になかったのですが、当然の如く次第に惹かれていきます。
『 鏢匪同道せず 』という戒めが鏢門の掟にあるのですが、鏢師と土匪は同じ道を歩けない(人生を共に歩いてはいけない)という意味を持ちます。
路瑶てい は 安順が鏢師、自分が匪人という事実と、
更に安順には婚約者がいることを知ったことで、この片思いも萎んでいくかと思われましたが…
安順と路瑶てい、更に安順の婚約者にして師匠の娘、戴戒(たい·じゅう)との恋愛戦はこの物語の見どころの一つです。
そして彼女たち以外にも安順に惹かれていく女性がいるのですが、その人物も悲しくせつない物語で描かれています。
安順の堅物具合だけの問題とも云えない、激動の時代に翻弄される彼らに、どんな結末があるのかを見ていただきたいヒューマンドラマです。
実はこのドラマ、ハッピーエンドとは言えず、むしろバッドエンドともとれる終わり方なのですが、
彼の望むところで終了するので、これはこれで良いエンディングということなのでしょうね。
このドラマは安順の不変の強い意志、思いを描いていますが、
何度も書いているように、旧体制から近代国家、不安定な政局で民衆にも変化が求められる様が描かれています。
清朝時代の男性の辮髪令から始まりますが、役人たちはスーツやハットという西洋化がドラマを追う事進んでいきます。
そういった変化が映像で追えるのがこのドラマの見どころのひとつですが、安順ことウォレス·フォは辮髪、馬術、剣術、槍術、全てが絵になる凄い俳優さんです。
そして彼を取り巻く俳優さんも負けず劣らずの個性派揃いで彼の演技を際立たせています。
またコミカルな要素も多い作品で、まさに笑いと涙と感動の極上エンターテイメントに仕上がっています。
是非ご覧になっていただきたいオススメドラマです。(全38話でDVDにして19巻と長いですが)
サブスク、レンタルでの視聴かと思われますが再放送をBSで何度か見かけていますので、そちらを待つのも、もしかしたらアリなのかも です。
いい人が損をする、だけども、男が惚れる男
そんなドラマをお探しならこの 『ひょう門』をオススメします。
ちゅう も損する性格だとよく言われるのですが、単に主張が弱いだけでは、とどこからか聞こえたうえに、
本物のいい人は、その損を損だと思わないし、ましてや後悔などしないものだと、
ちゅう の小物感ぶりを酷くディスる感じの声が聞こえたような気がして、ただただ悲しくなった 小物感満載の ちゅう でした。
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