1985年発売、英国のプログレッシヴロックバンド、マリリオン(Marillion)の3枚目のアルバムで初期の代表的アルバムにして80年代プログレ界をも代表する傑作アルバムです。(原題misplaced childhood)
プログレバンドが80年代に入り軒並み苦戦するなか、MTVでマリリオンの追憶のケイリーというミュージックビデオがちょくちょくオンエアーされていたので、アメリカでも欧州同様そこそこのヒットだったのでしょう。
プログレバンドだとyesやrushなどのヒットがありますが70年代のスタイルのまま、プログレらしさを維持したままのバンドということではマリリオンが80年代の代表格と言えましょう。
しかしイエスはともかくラッシュやマリリオンはプログレファンから正統な評価を得られていない代表的なバンドでもあります。
ラッシュは確かにmoving picture以降楽曲のコンパクト化が進んだこと、非欧州のバンドであること、シンセの多用やシーケンサーの使用と時代に合わせるのは得意なバンドだったことなど、非プログレの要素もありましたが、リズム隊のプレイぶりはプログレそのものって曲が多いバンドです。あとニール·パートの書く詩の内容ですよね。ラブソングのヒット曲のものではありません。
そんなラッシュは90年代にdream theaterの登場でプログレ界の評価を取り戻します。近年のローリングストーン誌のプログレランキングの特集ではピンク·フロイド、キング·クリムゾン、ラッシュの3強になってますね。
マリリオンもそういったランキング系では上位のバンドになるのですが、それでも評価が低い感じがします。
70年代後半のパンクの興隆で瀕死のプログレッシブロック(ブリティッシュロックでいいのかも)の灯火を守ったのはNWOBHMのアイアン·メイデンとフィッシュ期マリリオンくらいだと思います。
異論あるかと思いますがメイデンはスティーブ·ハリスの大作主義のため長尺で複雑progな70年代的曲が多いですからね。
しかしマリリオンの方は一部プログレファンから受け入れられませんでした。progressive という単語の意味で考えるならば、70年代ジェネシスの真似をしていて進化してない、だからプログレではないって感じなのかな。
しかしギターサウンド好きのロックファンやNWOBHMのメタルファンに受け入れられていきます。
マリリオンはポンプロックやネオプログレと呼ばれましたが、その後ポストプログレ、ポストロックなどのジャンルで呼ばれます。
90年になる頃、フィッシュからかなりタイプの違うスティーブ·ホガースへボーカルが交代してから、彼の声に合わせたスタイルに傾倒していくからです。それでも94年のbrave、04年のmarbles は過ち色の記憶とは明らかに違った作風ですが、こちらも傑作です。
現在プログレ界を引っ張る存在のスティーヴン·ウィルソンもbraveに影響を受けたとのことなので音楽性は近いですね。ドリーム·シアターがラッシュを認めるようにスティーヴンがマリリオンを認めるのは面白いですね。スティーヴンはジャンルに囚われない活動もしてますが、それでもプログレへのリスペクトはとても強く感じるミュージシャンです。

過ち色の記憶 はポンプロック時代の商業的ヒット作と言われますがヒットが生まれづらいと言われるコンセプトアルバムです。
少年時代の辛い思い出を綴ったものでA面B面それぞれで曲間の無い連続した演奏が続くのですが、voのフィッシュの演劇じみた語りやボーカルスタイルがジェネシスのピーター·ガブリエルに似ているので、ジェネシスのフォロワーと言われています。
サウンド面のキーマン、スティーブ·ロザリーはプログレぽくない感情的で古典的なギターリストで、ピンク·フロイドのデヴィッド·ギルモアっぽいですね。
そんなブルージーな泣きギターと綺羅びやかなキーボードワークが絡むコンビネーションがマリリオンの売りです。
ボーカルが変わって音楽性の変化があっても変わらないマリリオンの音は、バンド活動初動でいくつかのメンバーチェンジはあったもののボーカル以外はほぼ不動といえることも影響しているでしょう。

このアルバムの後、マリリオンはフィッシュとは最後の作品となる 旅路の果て をリリース、こちらもヒットするのですが、voの脱退でファンはどうなったでしょうか。
最初ホーガスは受けられないかと思っていましたがそれは ちゅう だけだったかも知れません。私はマリリオンのファンではあったもののフィッシュ推しだったのです。フィッシュのソロは良い作品もあったものの最後のアルバムが数年前に発売になり店仕舞いを始めているとこです。
本家マリリオンの方はサブスクの時代になるまで薄く聴くことになりました。しかしその間マリリオンはファンに支えられ現在もメンバー変わらず現役で活動しているのです。
ちゅう が年をとったこともあるし、人生のいろんな経験や挫折もあったし、サブスクで音楽の聞き方が変わったこともあるでしょう。radioheadのOK computerだとか今回のマリリオンの brave などのポストロックに繋がる辺りも好物になっています。
今はブリティッシュロック的で、内向的、暗さ、ゆったりさ、モダンさに魅せられているのです。
ちゅう が学生時代に聴いた 過ち色の記憶 と近年はまった ブレイブ のどちらが良いかは聞かないで下さい。それくらいどちらも好きなアルバムです。どちらもコンセプトアルバムですのでアルバム単位での試聴がマストですが 過ち色の記憶 の方が聴きやすく解りやすいアルバムです。是非一度試聴してみて下さい。ブレイブも是非 ⤵️
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