both sides now といえば、カナダのシンガーソングライター、ジョニ·ミッチェルの代表曲。
青春の光と影 という邦題の方が分かりやすいかも知れません。
愛は美しいものだけれども、別の角度で見てみると、愛は残酷でもあります。
大人に近付いていくにつれ、酸いも甘いも経験して、お花畑でいられなくなります。
愛に限った話ではないですが、
物事の二面性を知り、何が正しいことなのか、という青春の葛藤を歌ったのが、
both sides now (青春の光と影)です。
このジョニ·ミッチェルの both sides now を主人公が歌うシーンで涙した映画がありました。
ジョニの名曲を歌いながら、
その歌詞の内容を手話で伝える女子高生の感動のドラマ、コーダ あいのうた がそれでした。
映画 コーダ あいのうた に関するプレイリストです。
both sides now の原曲、主人公ヴァージョンも入っています。
CODAコーダ(CODA)は Children Of Deaf Adults の略で 、
耳の聞こえない人の子供 を意味します。(正確には耳の聞こえが悪い人も含まれています)
耳が聞こえない人の苦労があることは、わかるのですが、
それがどんなものなのか、詳しく知ることは難しいです。
経験がないから想像でしか苦労を知り得ないのですから。
それでも、なるべく多くの事例、情報を蓄積していくことが無駄であるわけではないですし、
多くの人たちがそれを共有できるようにしていくことが、
これからの時代に求められることだと思います。
そして、ろう者の親をもつ子供にスポットを当てた今回のお話しは、
子供たちにはどんな苦労苦悩があるのかを知る良い機会に思えました。
脳出血で右半身に麻痺が残った 私、ちゅうは、
同じ境遇の人とこの病気について情報交換したりしてきました。
ちゅうの場合は身体に慢性的な痺れと痛みが残るのみでしたが、
同じ病気の仲間の中には、利き手側の半身が自由に動かせない方もいます。
そういった自由に使えないことの苦労を知りたくて
利き手を使わずに、歯を磨いてみたり、髪を洗ってみたりするのですが、
本当に大変な作業だという事がわかります。
そういった相手の立場に寄っていく姿勢で、この映画を見て、
ろう者、コーダの方々の考え方、苦労の一端を知りたいと思い、
コーダ あいのうた を視聴してみることにしました。
コーダ あいのうた は21年公開の米·仏·加のコメディドラマ。
アカデミー賞作品賞を含む、3部門を受賞しています。
10年ほど前のフランス映画、エール ! のリバイバル作品でもあります。(ちゅうは未視聴デス)
両親と兄の4人家族の中で一人だけ健聴者である主人公ルビー(エミリア·ジョーンズ)。
ルビーは、家族、生活のために、
ある時は家族専属の通訳として、
ある時は家業の漁業の働き手として、
学校に通う家族想いの女子高生です。
両親はどちらも先天的なろう者になりますが、
兄も両親と同じ先天的ろう者、
ルビーは家族で一人だけ、コーダ(CODA )ということになります。
家族間では手話でコミュニケーションがとれますが、
外に出るとどうしても娘の通訳に頼りがちになってしまいます。
朝は早朝から漁に出かけ、自転車で学校に直行という忙しい毎日。
かわいらしい女子高生でも、磯臭いだろうし、疲れから授業中に居眠りしてしまうルビーは、
女子高生である前に、家族で暮らして行くことを優先する生活になっていました。
そんな彼女にとって歌を歌うことは特別なこと。(夢は歌手になること)
漁の時も、自分の部屋にいる時も、誰に聞かせるわけでもなく、
自然と歌を口にしてきた彼女は、
高校の選択授業科目を選ぶのに、それほど時間はかかりませんでした。
合唱クラブを選んだのは、歌うことが好きということだけではなく、
憧れの男の子、マイルズ(フェルディア·ウォルシュ·ピーロ)の存在
もありましたが。
ルビーの歌の才能を見い出したクラブの顧問は、
音楽の大学にいくべき、とルビーに進学を勧めてきます。
ルビーは今まで考える余地さえなかった自分自身の夢を描くようになっていきます。
家族のために今まで通り仕事のサポートをするという義務感と、
自分自身の夢を叶えること、
その葛藤が、冒頭のジョニ·ミッチェルのboth sides now の歌詞とダブってきます。
(そして、そこにマイルズとの恋の行方も絡んでいきます)
このことに、ルビーの家族にも考えがあります。
父と母は、ルビーと一緒に仕事をすることに慣れっこになり、一緒にいるのが当たり前になっています。
ルビーの力(特に通訳力)がないと仕事が回らない。
一方、兄の方は、ルビーの人生を歩むべき、というスタンスです。
彼女をいつまでも通訳として拘束することに疑義をもち、
実際、彼女抜きで価格交渉したり、彼女に頼らない行動が兄には見られます。
彼女がいた方が良い結果がでると分かっていても、
彼女の人生を優先させたいと願う優しい兄。
最初はルビーですら自分の将来は家族とともにあるということに、何ら不満もなかったようなのですが、
ルビーを縛り付けるなという兄の思いはもちろん、
合唱クラブの発表会で娘の歌う姿に触れた父は、娘への愛情から考え方が揺らいでいきます。
ルビーの将来を考える家族のパワーバランスが少しづつ変化していきます。
そんな折、ルビーを置いて漁に出かけた父と兄が、
停船の命令を無視したことで、ペナルティーを受けてしまいます。
ルビーがいないので警告音や無線の呼び出しに対応できなかったことが、
命令無視に繋がっていったわけですが、
この事件がルビーの夢の諦めに傾いていきます。
夢を叶えたいけど、諦めるしかないのか。
コーダとして生まれた彼女の選択の難しさが視聴者に伝わるシーン。
そして単純に夢を追いかければいい、なんて云えない話。
ルビーの未来がどう進んでいくのか、
ルビー、家族はどんな結論を出すのか、
続きは映画本編で確認していただきたいです。
ちゅうは Amazonプライムビデオ で無料で視聴しましたが、
他のサブスクでも無料があるようですし、レンタルもアリですね。
この映画を紹介するにあたってどうしてもお耳に入れたいことは、
ルビーの家族役、つまり父、母、兄の3人が本物のろう者であることです。
そういう役者さんが多数所属するアメリカの俳優協会もそうですが、
実際ろう者の俳優さんを使ってリアルを求めたこの作品の本気度が伝わってきます。
その家族の中で主役のルビーを演じた エミリア·ジョーンズ(イギリス人)の頑張りも触れないわけにはいきません。
手話の取得、歌の方のプレッシャーと、
主人公としての力量以上のものをこなしたエミリア·ジョーンズは、
正にリアル·ルビー🤣
若いのに本物の頑張り屋さんです。
父親役のトロイ·マイケル·コッツァーも味のありすぎる演技で、アカデミー賞助演男優賞。
彼と音楽顧問の二人だけでこの映画のコメディ部分を演じたくらいの大活躍でした。
音楽顧問の先生(エウジェニオ·ダーベス)も物語が進むにつれ評価が爆上がり。
これがリアルな現実のお話なら、この先生がルビーの生涯の恩師になっていくのだと感じました。
後は音楽についても触れなければなりません。
映画の演出で大切と思われる曲を選曲(ルビー&マイルズ、ジョニ·ミッチェル、マーヴィン·ゲイ)、
ちゅうが気になった曲(デヴィッド·ボウイ、クラッシュ)、
おまけ(ジョニ·ミッチェルの Blue )、
をプレイリストにアップしました。
劇中でデュエットするルビーとマイルズは、実際俳優が歌っていますので、これがまず聞きどころ。(原曲マーヴィン·ゲイ)
俳優選びは “歌える”ということが必要条件だったのでしょうか。
ルビーもマイルズも激選を潜り抜けてきたのが分かりますね。
あと、この映画中の発表会で使われた合唱アカペラの スターマン (原曲デヴィッド·ボウイ)。
これが、結構良い使われ方をしていています。
このシーンも感動出来るので是非映画で音で感じて欲しいです。
コーダ あいのうた の音楽はコチラで聞けます👇👇👇
CODAコメディタッチで進んでいくこの映画ですが、
担当が決まっています。
コメディ担当は、ルビーの両親と音楽顧問、ルビーの友人。
シリアス担当は、ルビー、ルビー兄。(マイルズもコチラ側)
この映画のタイトルである、“コーダ”の物語というコアが強過ぎて、
最初は、ろう者の主張がコメディで薄まるというか、ろう者の主張が置き去りになってしまった印象でした。
しかし、ストーリーが進むにつれて、その違和感はなくなっていくのですが、
そもそもこの映画は、両親家族にろう者をもつ“コーダであるルビー”の物語であること気付かされました。
それでも、2回目の視聴時には、ろう者にスポットライトが当たる場面は結構散りばめられていることが分かりましたが。
興味深かったのは、
漁業仲間と飲みに出かけたルビーの兄が、時間が経つにつれ孤立してしまうシーンと、
ルビーの音楽発表会にいった時のルビーの父の反応でした。
前者の兄の方は、周りに酒が入り酔いが回ってくると、会話の出来ない兄はどんどん孤立してしまう。
ただ単に話に入っていけないというのもそうなんですが、最中兄はずっと無音状態だということ。
何一つ言葉がわからない国の飲み屋に投げ出される感じに近いのかな。
後者の音楽発表会の方は、ルビーが歌っている時にルビーの父が周りを見渡すシーン。
父の視点で周りの聴衆を見渡す場面では、
父の視点(?)で完全な無音状態になります。
ルビーの家族がろう者だということに、改めて気付かされるシーン。
こんな気づきが自発的に出来るようになり、
筆談ででもコミュニケーションをとって、不安を少しでも取り除けるような人になりたいちゅう でした。
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