親指Pらの市民権

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中学生の頃オリバー・ストーンが脚本したミッドナイト・エクスプレスという映画をレンタルしたことがありました。レンタルビデオ店といっても成人向がメインと思われ、一般映画のタイトルは20~30本位しかなかった小さな店でした。そこそこ有名作品ばかりでしたが、少し微妙な品揃えだったとも記憶してます。

ちょうどビデオレンタル店というものの初動期の形態であったのでしょう。当然個人経営のいわゆる商店であるし、タイトルをマジックで書いているのが結構あったりと、今の ちゅう がレンタル店を開いたほうがマシじゃね、というレベルだったと思います。

その店で最初はトワイライトゾーンというホラーというかミステリーの作品を借り、2回目が冒頭のアカデミーの脚本賞をとったミッドナイトエクスプレスのビデオを借りたのでした。

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ウブな中学生 ちゅう にとってミッドナイトエクスプレスには3つの衝撃がありました。①暴力シーンで相手の舌を噛み千切るシーン(グロ)、②刑務所に面会にきてくれた恋人に裸を見せて貰い、そこで自慰するシーン(エロ)、③刑務所の所長(男)に主人公は男なのに襲われるシーン 、の3つでした。(③は上手く逃れるのですが)

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グロ、エロと共に見せられた男同志(未遂)の場面は、思春期ちゅうにとっては、未知のもので、気持ち悪いもので、理解不能のものでした。作品としてはアカデミー賞の名の通りよくできた映画でしたが。

それから40年程たった今振り返ってみると、性愛についてだいぶ寛容な世界になったと感じます。自分がずっとノーマルなのだと感じていた、その考え方自体が線を引く行為なのだと、自分以外をアブノーマルと呼ぶことに等しかったと今は思っていますが、そういった理解を醸成する40年だったと思っています。

それまでに映画ボヘミアンラプソディーのクイーン、フレディ・マーキュリーのエイズやLGBT、最近でもりゅうちぇるの性的指向氷川きよしのジェンダーレス、等影響力のある人たちの発言で、理解を示す人が増えているように思います。

ちゅう にとって、そういった理解を深めるために考え方を提示してくれたのは、松浦理英子親指Pの修行時代 (以下親指P)という小説でした。

松浦さんはナチュラルウーマンで有名な小説家ですが ちゅうのお気に入りはデビュー作 葬儀の日と 今回の 親指P です。

葬儀の日は昔、数名の作家の短編小説を集めたものをどこかの図書館で借りた記憶があります。後に親指P を読み、松浦さんを調べた時に 以前読んだ葬儀の日 の作者だと分かり、なるほどと納得できました。心理描写に葬儀の日を想起させるものがありましたから。

松浦さんの親指Pの修行時代は1991年初出の小説です。無邪気で平凡な普通(?)の女子大生の一美の右足の親指が男性器の形状に変わったことから物語は始まります生殖能力がない以外アレとほぼ同じ一美の親指をめぐって今まで築いていた人間関係の変化、一美と同じようにアブノーマルと言われる人達との交流(修行)が描かれていきます

一美は先日自殺した友人の遥子が何らかの理由で一美に親指Pを授けたと考え、遥子を共通の友人にもつ小説家Mを訪ねます。最初は小説家M(松浦さん?)からの目線で一美のイメージを語ります。

共通の友人をもつ一美とは何度かあったことはあるが顔を思い出せません。実際に訪ねて来たときに思い出すものの特徴のある顔立ちであるとの印象。いつも友人の横で控え目にいたということから、目立つ要素はあるのに友人の横で一歩下がった位置で目立たぬよう努めていたのではと想像出来ます。

その後一美目線で彼女を取り巻く人たちのことが語られていきます。

①小説家Mにその親指Pを道具として使うという何気ない意味が頭に植え付けられる。

②婚約者の正夫は親指の存在をよく思わず関係がギクシャクする。親指を切り落とされそうになり別れることに

③盲目のピアニスト春志は快楽のためではなく挨拶変わりで男女問わず性的にスキンシップする。(純粋なので利用されやすい) 一美の次のパートナーとなる

④春志を利用するチサトは春志を一美に取られる。一度一美が寝ている間に親指Pを試そうとする。(未遂)

⑤晴彦は元婚約者の正夫の友人。知り合いの彼女を寝取ったことが原因で正夫とは少しギクシャク。後にチサトと付き合うことになる。一美は自由奔放な彼が苦手だがフラワー・ショーのことを教えてもらう

晴彦から教わったフラワー・ショーが一美を次のステージに上げます。このショーは一美と同じように性的なイレギュラーたちが興行する見世物小屋のような感じなのですが、一美も春志もフラワーショーに興味をもち、一美はショーの手伝いで、春志はショーのピアニストとしてフラワーショーに関わっていきます。

一癖も二癖もある団員との集団生活のなかで一美は様々を学び、感じ取っていきます。ノーマルであると思っていた人が自己本位であったり、自由奔放な人が実はとても純粋であったり。

ノーマル、アブノーマルの区分けよりも人間として大切にしなければならないものは何なのかを考えさせられます。

この後フラワーショーとの関わりにも化学変化が起きるのですが続きを楽しみに是非小説で追いかけて頂きたいです。とても90年代の小説と思えないほど進んでますよ

親指Pらは市民権を得ました。21stの第二四半期の手前で時代は親指Pらに追い付きました。まだ法制度はこれからですが、Pらの存在の認知が広く進んでいくことを望んでいます。

あまりに政治利用の駒にされたり、積極的に政治利用に使ったりというのが可視化されゲンナリすることもあります。動機が変わってしまうのは残念なことですね。

性差別ばかりではないですがあまり過度に主張すればいらない争いが起こるので、良い形で決着して欲しいと思う ちゅう でした

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