真夏の熱帯夜のこと。
部屋を暗くして、視聴映画を決めて横になって、
冷えた缶チューハイ(ノンアル)の強烈な酸味を楽しんでいたら
スピーカーから聞き覚えのある ゆったりとした浮遊感満載ソングが流れてきました。
女性の下着の試着を 遠くから覗き見する映像で始まったこの映画は
「観察者」
というヨーロッパ風のタッチのアメリカ映画だったのですが
女性ボーカリストが歌う オープニングの曲名を、どうしても思い出せないことに苛立ちを感じながら
そのメロディを何度も頭で繰り返して、記憶のかけらを探りながら映像を見つめていました。
結局は曲名を思い出すことにはなったのですが、
自力で思い出したというよりは、映画の内容に呼び起こされた感じ。
原曲は、ビリー・アイドル の80年代のヒット曲、アイズ(Eyes Without a Face)
(そういえば、この曲は古いヨーロッパ映画にインスパイアされて作られたとのこと 後述しますね)
今回の映画では、エンジェル・オルセンによる カバーバージョンがオープニングに使われています。
この曲の作者は、ビリー・アイドルと 彼の相棒 スティーブ・スティーブンス。
スティーブ・スティーブンス といえば、
映画トップガンの曲、TOP GUN Anthem の印象的なギターで有名な方。(作曲ハロルド·フォルター·メイヤー)
メタル系から マイケル・ジャクソン、氷室京介、フラメンコ💃と ジャンルに縛られないギターヒーローでしたね。
TOP GUN / Soundtrack ビニール amazon
話しを戻しまして、
その Eyes Without a Face という意味ありげな曲が 妙にマッチしてしまう
「観察者」
を 今回はご紹介したいと思います。
観察者(原題 The Voyeurs)は、2021年アメリカ公開の サスペンス映画。
⚠️🆘ネタバレ注意⚠️🆘
主人公ピッパは、眼科(眼鏡屋?)に務める可愛らしい女性。
音楽家である彼氏 トーマスとはちょうど同棲を始めるところ。
ピッパは彼を喜ばすためにセクシーな下着を購入、(映画冒頭の着替えシーンは彼女)
二人が暮らすことになる高級マンションに向かいます。
ちょうどトーマスが 不動産業者と契約を交わしているところで ピッパもマンションに到着、
業者からマンションの特約事項の説明を受けます。
(特約事項は カーテン等の使用禁止があり…)
二人で暮らすことになる嬉しさ(多分)で条項を流し読みでサインしてしまいます。
夜になって引っ越しも一段落ついて
暗い部屋でムード満点のワインを楽しむ二人。
窓から景色を眺めると
向かいのマンションが丸見えなことに気が付きます。
丸見えの部屋は、カメラマンのスタジオ兼住宅マンションになっているようで
セクシーな女性をカメラに収めるカメラマンの姿に目をやるピッパとトーマス。
妖しい雰囲気のスタジオを覗き見していると、二人の予想(希望?)通りに
向かいのイケメンカメラマンとモデル(奥さん)はセックスを始めてしまいます。
ピッパもトーマスも興奮しながら向かいのカップルの行為を鑑賞、
これ以降二人は、向かいのマンションの行動に釘付けになってしまいます。
ピッパたちは部屋を暗くしていたので、向かいからは見られていないでしょうし、向こうも周りの目を気にしている素振りもみせていません。
そんなこともあって、
人に見られることに快感を覚えている住民、と 二人は思い込んでいたのでしょうね。
ピッパはその日、
買ったばかりのセクシー下着でトーマスを誘う気満々でしたが、
トーマスは引っ越しの疲れが出たのでしょうか、ベッド入るとすぐに眠ってしまったようす。
向かいの行為を見せられたピッパは、悶々とした思いで淋しく一人寝することとなりました。
その後も、
毎日のように向かいの性行為が目に入る二人は、覗き見することにどんどん嵌っていきます。
そして、性行為だけでなく、向かいのカップルの一部始終を観察しているうちに、
彼らの声も拾いたい という欲望を持つに至ります。
レーザーポインターで光線を鏡で反射させることが出来れば、(大きな固定窓を介して)
違法ではあるけれども 盗聴可能、というトーマスの仮定話しに乗っかった ピッパは、
ちょくちょく行われている向かいの仮装パーティーに紛れ込み、手鏡を隠し置いてくることを思いつきます。
大胆な作戦ですが、二人は仮装して、向かいのカップルのパーティーに参加、
向かいのカメラマン男(筋肉隆々の超絶イケメン白人)に気に入られ付き纏われた ピッパでしたが、
上手く鏡を隠し置くことに成功します。
部屋に戻ったピッパとトーマスは、レーザーポインターで置いてきた鏡を照らし
本題である盗聴出来る環境を手にします。
(文系なので盗聴出来る仕組みがよくわかりませんが)
そこで二人が拾った(盗聴した)会話は、
カメラマンと その妻の深刻な夫婦喧嘩(夫の浮気を疑う)の内容でした。
翌日、ピッパの務める眼科に一人の女性がやってきます。
その女性は例の向かいの住人、カメラマンの妻 ジュリア。
昨夜の夫婦喧嘩の際に壊れてしまった眼鏡を、作り直すためにやってきたのでした。
ジュリアの担当となったピッパは、
眼鏡選びの中で ジュリアに気に入られてしまい、彼女と友人づきあいすることになってしまいます。
そのことを家に帰ってからトーマスに話したところ、
ちょうどジュリアがピッパの眼鏡屋にいた頃、ジュリアの夫がモデルと浮気していたことをトーマスから聞き出します。
それを聞いたピッパは、親しくなったジュリアを想い、彼女の夫が浮気をしていることを伝えたいと考えるのですが、
そうすれば、ピッパとトーマスが盗視なり盗聴をしていたことを知られることになるのでトーマスは大反対。
正義を通したいピッパと、
盗視・盗聴を止めるにしろ、二人でしてきた犯罪行為を隠したいトーマスとの間で
少しずつ溝が生まれてきました。
ですが、ジュリアと ピッパの友人関係の方は、会う度に強くなっていきます。
そしてジュリアが、夫婦生活に不安があることを知るビッパ…(この時に彼女の夫の名はセブと分かります)
二人の絆が強くなるにつれ、
トーマスに反し、ジュリアに本当のことを教えてあげたくなってくるのでした。

ある日ピッパは、
ジュリアがマンションにいない時の
セブの3P不倫の一部始終を目撃します。
彼が、事後のコンドームをチリ紙に包み、洗面台にあるゴミ箱に捨てたところまで
ピッパは目撃(盗視)していました。
その日の夜、ジュリアと セブが別行動の時分に(更にトーマスが眠った後)
ピッパは、ジュリアの近くにあるプリンターの遠隔操作でメッセージを印刷します。
(プリンターの型番を双眼鏡で確認、自宅のパソコンに ドライバーをインストールしたのでしょうね 出来るかどうかは 知らんけども)
1枚目のメッセージは、
セブが浮気をしている、と
2枚目は、
コンドームは洗面所のゴミ箱に捨てた、と。
この場面で、眠ったはずのトーマスが起きてきます。
トーマスは、
ピッパが一人で自分に隠れてジュリアの動向を探っていること、
そして、向かいのマンションのジュリアの動きで、ただならぬ事態が起こっていることを理解します。
ジュリアは包丁を持って、眠っている夫のベッドに向かっているのですから…
息を呑んで、ジュリアの動向を見つめるピッパとトーマスは、
ジュリアが夫殺しを断念して、泣き崩れてしまうところを確認します。
君が引き起こしたんだぞ、と言わんばかりの勢いで双眼鏡を取り上げるトーマス。
夫の浮気を知り泣き崩れるジュリアも
ジュリアのためにしたことが、ジュリアのためにならずに、トーマスまで巻き込んでしまったピッパも、
そしてトーマスも
誰も幸せになれなかった悲しい夜となってしまいました。
翌日の朝、
血まみれのジュリアと ジュリアを抱きながら起こそうと必死の セブを目にした ピッパとトーマス…
トーマスはその日、部屋を出ていきました。
雪がチラホラ見える時期になった頃
トーマスが出ていった部屋で、独り寂しく過ごすピッパ。
ジュリアがいた向かいのマンションを見れば、
ジュリアのいなくなった部屋で、彼女の夫セブが酒を煽っているばかり…
ピッパは、セブの人生も壊してしまいました。
ある日ピッパは、マンション窓から
近くにある飲み屋に入る セブを見かけます。
彼の心配をしているのでしょうか、
ピッパも 彼が入った飲み屋に入り、彼の動向を探ります。
彼はいつもの通り、ジュリアを失った悲しみから淋しそうに酒を煽っていましたが、
ピッパからの視線を感じた彼は、彼女の席までやってきて一緒に酒を飲むことになります。
彼はピッパのことを知らないはずですが、仮装パーティーの時のように何か惹かれるところがあるようです。
君を写真に撮りたい、という彼のセリフに頷くピッパは、
彼の部屋へ行き、
写真を撮られ
ヌードを撮られてしまいます。
君を見ると妻を思い出す、という彼の言葉に引け目を感じたのでしょうか、
そのままベッドイン。激しく愛し合います。
翌日、朝帰りすることになるのですが、
部屋に戻ったピッパは、そこで
部屋の中で首を吊る元彼 トーマスを見つけます😱
彼が首を吊ったのは、昨晩の情事をこの部屋から目撃したからしか考えられません。
ジュリアに続き、またしても人を傷つけて、結果として 人の命を奪う形となってしまったピッパ…
彼女はどのように困難に立ち向かっていくのでしょうか?
そして、
実はこの後、
大ドンデン返しが ピッパを待つことになるのですが、
果たして何が起こるのでしょうか?
奇想天外な終わりを迎える この続きは、
是非とも映画を見て確認いただきたいです。
自分の性癖を晒すようなこの映画、面白いですね。
覗き見なんて少なからず誰にでもあること。
ちゅうも胸元の緩い女性がいれば、やっぱり見てしまうし、
ピッパやトーマスのように共犯者がいれば、エスカレートしていくのも分からなくもない。
飛躍してしまうけど、対象が自分の好きな人だとか、好きな芸能人という設定ならば、
多くの人は簡単に欲望に負けるような気がします。
そう思うと、誰にでもあり得ることなのかな、悲しいけれども。
ただピッパの中途半端な正義感で突っ走るのはちょっと引いたかも、です。
共犯者の立場も考えて、もっと話し合わなければならなかったと思いますね。
ただこの映画に目につく部分はあったにせよ、
展開の上げ下げの振りが大きいなかなかの良作に仕上がっていますので、
是非ともご覧いただきたいですね。
冒頭に書きましたが
Eyes Without a Face という曲がオープニングとエンディングで流れるのですが、
この映画では“目(eyes)”というものが大きなポジションを占めており
“目”にまつわる描写、小話しがたくさん見られます。
ピッパが仕事として診ることになる患者の瞳孔の描写はもちろん、
目の映像とともに半熟卵(目玉)の映像も挟んでくる描写。
双眼鏡で遠くの人のセックスを覗きながらの 恋人とのセックス。(視覚を使った高度なセックス)
“鳥は翼を持つ目”という小話も面白いと思ったのですが、
遠くを見ることを可能にする双眼鏡は、ピッパの翼なのでしょう。
一番印象的だったのは、
ピッパが、翼(双眼鏡)を使って、
セブが3P浮気に励んでいるところを見つめるシーン。
本当は双眼鏡で見ているわけですが、
映画の映像では、彼らと同じ空間に彼女が実在しているように撮られています。
彼女の目が、彼女自身の本体となり、
セブの近くまで行って、浮気の事実を信じられないという面持ちで見届けています。
目が一番感情が見える器官だと ちゅうは思っているのですが、
彼女の目は、驚きと落胆を現したといったところでしょうか。
この曲が、ある映画にインスパイアされたことも、冒頭で触れましたが、
それは「顔のない眼」(Les Yeux sans visage)という 1960年の 仏·伊映画で、
英題が曲名と全く同じ eyes without a face になっています。
事故で美しい顔を大火傷してしまい 仮面を被って暮らす娘のために、
他人の皮膚を集めるマッドドクター(父)の話しなんですが、(美しき生首の禍 みたい)
それが「犬神家の一族」の スケキヨさんみたいな感じのマスクで
それを Eyes without a face と ビリー・アイドルは表現したんですね。
詞の内容は、Googleさんでも見てもらいたいのですが、
今回の映画は、
彼の「Eyes Without a Face」にインスパイアされて作られた映画じゃないか、という気がしてならないんですよね。
映画「顔のない眼」に影響を受けて作られたのが、
「Eyes Without a Face」という曲で、
「Eyes Without a Face」という曲に影響されて作られたのが
「観察者」という今回の映画じゃないかと、見終わったあと思わされてしまった ちゅうでした。
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