サスペンス、恋愛、ヒューマンドラマから、ファンタジー、ホラー辺りのフィールドの映画を好んで観ている ちゅうですが、
できる限り先入観なしで、映画に没頭できるようにするために、
事前情報を調べたり、映画情報、雑誌なんかから完全に離れて、
prime video で観たい映画をテキトーに選んで鑑賞するのが自分なりの楽しみなんですが、
たまに想像以上の 俳優さんや、センスの良い挿入歌なんかが出てくるとテンションがぐんぐん上がってくる作品があります。
今回ご紹介する映画は、そういったタイプの作品なんですが、
それに加えて
物語が物悲しさがありながらも、晴れやかな気分で終われる、なかなかの佳作でもありました。
その映画は「Touch / タッチ」
こういう映画があるというニュースも聞いたことがなかった中で鑑賞したので
俳優から音楽から 驚き、良く練られたストーリーに心を鷲掴みされ、
とても楽しむことができました。
それでは、今回はそんな映画
「Touch / タッチ」
をご紹介したいと思います。
Touch / タッチ(原題 Touch)は、2024年公開のアイスランド・英国合作映画。
🆘⚠️ネタバレ注意🆘⚠️
コロナのパンデミックにより、世界中がロックダウンされた頃のこと。
アイスランドで飲食店を営む クリストファーは、妻を亡くしひとりで老いにあらがう優しげな老紳士。(古希のほどの齢か)
際立った物忘れがあるわけではありませんが、自分の記憶力の衰えを感じ初めていたクリストファーは、ちょうどMRI検査の結果を待っていたところ。
主治医からは、人生でやり残したことが出来る最後のチャンスかもと言われ、
病魔が体を蝕む前に、以前愛した女性探しの旅を決意するクリストファー。
旅行するには一番不向きともいえるコロナ期でしたが、
妻の写真に“許してくれ”と一言残し 自宅を後に
ロンドンに向かうことになります。
時は遡り…
ジョン・レノンと オノ・ヨーコがベッドイン写真を世界中に公開した1969年のこと。
ロンドンの一流大学に留学していたクリストファーは、
保守的な大学の運営に不信感をもつカウンターカルチャー的な学生であり、かつ社会主義的思想をもつ青年でもありました。
一見、
高学歴、高身長、金髪長髪で超絶イケメンと人生の勝ち組ルートを突っ走るように映る クリストファーでしたが、
停学中の彼は大学を辞めることを真剣に考えていました。
ある日 クリストファーは、学友とともに論議をしながら街を歩いていると、
求人広告を店先に貼っている日本料理店が彼の目に入ってきます。
大学を辞める辞めないで学友と熱い言い合いになっていたこともあり、
彼は咄嗟的にその日本料理店に入ってしまいます。
外の喧騒から逃れたその店内は、
夕暮れの陽射しが入る 開店前で誰もいない静かな居酒屋風の佇まい…
奥の厨房からアジア系男性が現れたので、求人広告をみてここへ来た、とクリストファー。
結局、翌日面接をすることになるのですが、彼が店を出ようと振り返ったところで、
美しい日本人の女性と目が合います。
彼女の美しさに目を奪われてしまう クリストファー…
これがクリストファーと運命の人 ミコとの出会いでした。
クリストファーは、釣りや魚についての知識をもっていたことから、
店主 タカハシさん(本木雅弘)に気にいられ、その日本料理店で働くことになります。
一緒に働く店の人たちは皆日本人でしたが、クリストファーを温かく迎え入れてくれます。
そして、
彼が一番知りたかった美しい ミコ(Koki)は、タカハシさんの娘で、クリストファーと同じ年頃の大学生。
学生でしたから週末だけ店の手伝いをしていました。
クリストファーは、同じ職場の仲間に良くしてもらい、仕事のこと、日本の文化のことを知り
アパートに帰っても日本語の勉強と
急激に日本のことを学んでいきます。
そして ミコとも親しくなっていくわけですが、
彼女には同じ大学に、同じ日本人のボーイフレンドがいることを知ることにもなります。
昔のロンドンでの思い出とともに進んでいく クリストファーの人生最後の旅は、
ガラ空きのロンドンのホテルを拠点に ナカムラ ヒトミという日本料理店の同僚だった女性探しから始まりました。
20年前にも ミコを探していたというクリストファーは、
今回は、ミコと特に仲の良かった ヒトミを探し出し、そこからミコの情報を得ることに全てを賭けていました。
クリストファーにも親しくしてくれたヒトミは、彼と同じ共産主義者だったことから、そちらのツテから捜索していたところ、
現在もロンドンにある老人ホームで暮らしているという情報を得て、彼はタクシーでそちらに向かいます。
51年振りの再会で喜びあった二人は、まずは昔話しで盛り上がります。
ヒトミとの会話から分かったことは、
①タカハシさんとその娘 ミコは、店を閉じた後 日本に帰国したこと、
(何らかの理由で日本料理店は店じまいをすることになったようですが、それ以降クリストファーは タカハシ親子とは会っていないようです)
②2004年にタカハシさんが亡くなった時に、ヒトミは ミコから手紙を貰っていたこと
の2点。
クリストファーは、その2004年の手紙をみせてもらうと
そこには日本の住所が書かれていました。(ミコの日本の住所を GET)
これで、
コロナの真っ最中ながらも、クリストファーの最後の旅路の行き先は
アイスランド-ロンドンから 延長戦に入り
ミコの故郷 日本へと変わっていました。
日本に向かう飛行機の中で、またも50年前の思い出に浸るクリストファー。
それは、タカハシさんと ミコの親子の確執のことで
クリストファーが覚えているのは、涙するミコと交わした言葉のこと。
父親との喧嘩を、彼に聞かれてしまったミコが
「父は 故郷に囚われているの」と…
「故郷というのは東京のこと?」というクリストファーの問いに
「いいえ、ヒロシマ よ」と彼女…
彼はこの会話から“広島”について調べることになります。
広島に世界で最初に落とされた原爆のことや、原爆で多くの人命が失われたことだけではなく、
生き残った人間にも放射線病という試練が待ち受けていたことをクリストファーは知ります。
彼はタカハシ父娘の確執が、
広島の原爆と、そして彼女のボーイフレンド とが関係していると考え初めます。
実際に彼女は、父によってボーイフレンドと別れさせられてたようでしたし…
ボーイフレンドと別れた ミコは、その後 クリストファーに急接近していきます。
店に来てくれた彼の友人は、日本人を下に見るような態度をみせましたが、
同じ白人でもクリストファーは日本に興味を持ってくれたり、リスペクトしてくれたり
ロンドンにある日本料理店という日本の民族のコミュニティの強い閉鎖的な空間の中でも、
そこに溶け込んでいこうと努力できる彼の人柄に ミコは惹かれていきます。
クリストファーが日本料理を自分で作りたがっている、という話しを父親から聞いていたミコは、
私が最初に食べてあげる、とクリストファーの最初のお客様になってあげることになりました。
厨房を借りて日本的な朝食を作ることになったクリストファーは、
市場へ買い出しの後、早朝から厨房に入ります。
タカハシさんはクリストファーのために、割烹着を用意していてくれました。
彼が料理を作り初めると、程なく ミコもやってきて舞台は整います。
御座敷に向かい会って彼が作った朝食を審査するミコ…
ミコの微笑みを見て安堵するクリストファー…
そこからは恋人同士のような朝食が始まり、会話が進み、二人の距離が縮まって
二人はキスを交わしていました。

晴れて二人は恋人となり幸せな時間を共有していきます。
しかし、交際をオープンにしたい クリストファーの意に反し、
彼女の父親(タカハシさん)には秘密の交際を続けることになります。
クリストファーにはタカハシさんに気にいられているという自負があるので、反対される理由はないと考えていましたが、
ミコはそのことについては口を閉ざしたまま…
それでも二人の愛はどんどん育まれていきます。
ある日のこと、
ミコの部屋に(タカハシさんの家)に招かれるクリストファー。
そこで ミコと ヒロシマの話しが初めて語られることになります。
ミコの母親が描いたという原爆を受けたヒロシマの地獄絵図なスケッチ画を見ながらの話しは
下記のような内容でした。
①ミコの母親は妊娠中に被爆した。
②ミコの父(タカハシさん)は離れたところで仕事をしていたので被害が小さかった。
③ミコの母親は子どもを産んだ後一年後に亡くなった。
④その時産まれたのがミコ。
⑤ミコは胎内被爆者…
クリストファーはタカハシ家の悲しい物語を初めて知りました。
店で、明るい同僚 ヒトミに聞いても顔を背け口を閉ざしてしまう“被爆者”という言葉。
ミコの力になりたい、ミコの不安を取り除きたいクリストファーには
“原爆で被害を受けた人”というその言葉の重さは分かるものの、
本当の意味の弊害を知る術がありませんでした。
クリストファーの割烹着も板につき、料理のスキルも上がってきたある日、
店を8日間も閉めることになった、とヒトミから聞かされます。
今までは8日間も閉めることがなかったタカハシさんの店でしたが、今回は家の用事でロンドンを離れることになるといいます。
営業時間が終わり、長期の休みに入る店じまいを任されたクリストファーが
戸締まりをしようとするところに、
淋しげな ミコがやってきてクリストファーに抱きついてきます。(イヤな予感 個人の感想デス)
“クリストファーに渡したいものがある”といって渡されたものが、
母親の形見だという 手作りの湯呑み…
アイスランドに日本人はいるのか、とか意味ありげな質問ばかりしてくるミコに
「何かあったの? 僕に話して」と優しく対応するクリストファーに
抱きつきながらキスをするミコ。
キスはそのまま、二人は服を脱がし会って厨房で愛し合います。
まるで最後のセックスのように求め合った後、
黙って彼に口づけして店を飛び出していくミコ…
ミコの目には涙が見えているのに、何故ミコを追いかけないのか?
彼にはミコの涙が見えなかったのでしょうか。
画面は現在に戻り、広島のマンションのシーンが映し出されます。
ここは、
やっと辿り着いたヒトミの手紙にあった広島の住所。
クリストファー人生最後の旅の終点地…
7階に“高橋 美子”という文字。
間違いなくここに ミコがいるのでしょうが、夜中の到着ということで
日を改めての訪問をすることにするクリストファー。
過去の回想に戻り、
場面は、長期休みが終わる最後の日の アパート(下宿)のシーンから。
最後の別れ方が不安だったとはいえ、
明日から仕事ということで、ミコに会えるという期待が優ったクリストファーでしたが、
昨日、東洋人男性が来て彼に渡すよう手紙を託されたと、
アパートの管理人から一通の手紙を渡されます。
“クリストファーさん”
と日本語で書かれた封筒の中身は、
ドル紙幣…
部屋を飛び出して急ぎ店に行ってみると、
ヒトミがいました。
「どうして?何があった?」
「タカハシさんが閉店した…」とヒトミ。
いきなり閉店を告げられたといいます。
ミコのことを尋ねると、
“多分タカハシさん一緒にいると思うけど、どこにいるのか教えてくれなかった”
とのこと。
ミコの家に行ってみると、すでに荷物を出して退去済み…
少し前までは、二人並んで仲睦まじく座っていた電車のシートに、
茫然自失のクリストファーは独り寂しく座って…
そんな悲しい50年前の記憶を思い出しながら
いよいよ、
クリストファーは広島の ミコの住むマンションの前に立っていました。
50年の真相が明らかになる時…
ミコは、何故クリストファーに何も告げず彼の前から消えてしまったのでしょうか?
そしてミコは、50年間どんな生活をしてきたのでしょうか?
そんな問いの答えを、目の前にあるマンションにいるであろう ミコ本人から語られることになるのでしょうか?
そして50年間の月日を得ての、二人の再会はどのような意味を持つのでしょうか?
続きは
是非とも
映画を観て確認いただきたいです。
70年代の見せ方から、ヨーロッパでの広島の悲劇の捉え方、コロナのパンデミック、
などなどの繋ぎが絶妙な 見応えのあるとても良い作品でした。
ちょっと日本の描写にこだわり過ぎている感があって(原作者が日本通のアイスランド人)
日本文化を知らない人が付いてこれるのかなぁという心配もありましたけど
(日本に着いてからの飲み・カラオケのシーンはどうなのかなぁ 個人ノ感想デス)
設定良し、脚本良し、俳優良しのとても楽しめる映画でありました。
Kokiさんは、子どもの頃から親の七光とかいわれていますが、
この映画を見れば、そんなセリフ言えなくなるんじゃないかと思います。
それだけの華のある、実力のある女優さんだと感じました。
そして このルックスならば 多分日本よりも海外で、
若手のアジア系女性枠の一角を獲れるんじゃないかとも思います。
彼女は期待大ですね。
そして主人公にして恋人役の パルミ・コルマウクルが超絶ハンサム過ぎて こちらも驚きです。
無名に近い俳優さんみたいですが、こちらもこれからの活躍に期待出来そうです。(アイスランド映画以外にも出て欲しい)
今回の映画の中の70年代の描写でジョン・レノンやオノ・ヨーコの存在が出てくるのですが、
パルミ・コルマウクルと Kokiの存在が、
ジョンと ヨーコのような 欧米✕日本 カップルとダブって見えました。
それほどインパクトありの、絵になるムービーカップルでしたね。
ジョン・レノンとオノ・ヨーコといえば、前述の通りこの映画の中で
二人のベッドインの新聞記事が出てきたり
平和を我等に が使われたりしていた
というのは ありきたりといえば ありきたり過ぎる話しなんですが、
ニック・ドレイクの リバーマンが流れてきたのには正直驚きました。
(抽象的な歌詞を持つ リバーマンをバックグラウンドに俳句・詩 を考えるというシーンがあり…)
そういうセンスも感じる映画、と感じました。
そういえば
同じアイスランドの映画、好きにならずにいられない も以外な曲が使われている映画でしたね。
スレイヤーとか ドリー・パートンとか…
現在のSNSに垣間見ることができる 自分の正義を主張して他人貶しに終始する論調からいけば、
愛すべき女性と強制的に別れさせられ、別の女性と結婚して違う人生を歩みながらも
昔愛した女性のことを忘れられない、という性を否定するのでしょうか?
こういう物語を観るといつも思い出してしまうのが、ソフィア・ローレンの ひまわり という映画。
戦争で帰ってこない夫探しの旅に出たところ、
夫は記憶喪失で凍死寸前のところを助けてくれた命の恩人と結婚していました。
それを知り身を引いた妻は、傷心の自分を支えてくれた男性と再婚することになるのですが、
今度は、記憶が戻った男が葛藤の末、元妻を追いかけてくる…
という運命に翻弄される悲しい物語が ひまわり。
(ウクライナが舞台になった映画でした)
今回の映画の主人公 クリストファーについての50年間については、詳しく触れられておりませんが、
彼は戦争を直接肌で感じることはありませんでしたが、戦争によって運命を弄ばれた悲劇の主人公ともいえます。
あんまり彼を否定する人がいるのであれば、是非とも ひまわりを観てみて欲しいなぁと思った次第…
それにしても
何度も繰り返しますが、
今回の映画の主人公カップルは魅力に溢れていますね。
パルミ・コルマウクルと Koki の若い才能が、今回のこの作品で世界に羽ばたいていくことを期待したいです。
特に Koki
松田龍平・翔太 以来かな、偉大なお父さんのDNAを引継いでるなぁと感じる俳優さんは。
彼女は 世界的な映画のアジア枠女優のトップスターになるでしょう
と予言してみる タロット初めたばかりの素人占い師・ちゅうでした。
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